No.01 地域 辻町
店名 レストラン辰己屋

受け継ぐは自由な発想とファンの愛。
約200年続く老舗中の老舗で
ちゃんぽんと洋食を両成敗!

一口に老舗といっても、三代、四代続く店はそう珍しくは無い。でも、七代続くとなると、そう滅多には無いだろう。もはや地域遺産と言っても過言では無い人気店『辰己屋』がなぜ“絶メシ”候補に!?そんな疑問を抱きつつ取材にお邪魔すると、西洋風建築がモダンな建物が見えてきた。ショーケースには昔ながらの食品サンプルが並ぶ。すでにこれだけでおいしい雰囲気が満載なんですけど…。ちゃんぽんも名物という奥深そうな辰巳屋さん、おじゃまします。

取材/絶メシ調査隊 ライター名/大内理加

創業はなんと江戸時代!
柔軟な発想でつなぐ味のリレー

取材先取り違え疑惑を抱いたまま、恐る恐る店内へ…。ほらぁ〜、昔ながらのレストランって雰囲気でかなり素敵じゃないですかぁ〜!全体的に落ち着いた洋風のインテリアだけれど、奥には鏡をあしらっているので重苦しくなくて居心地がいいし、飴色のテーブルにかけられた黄色とピンクのテーブルクロスもかわいい。キョロキョロ見回していると、奥から七代目の東信介さんがお目見え。よ、よろしくお願いします!

東さん

「こんにちは。今日は宜しくお願いします」

そう言って手渡されたのは、辰己屋の来歴をまとめた一枚の紙。広報がいる企業ならともかく、個人の方が営業されているお店でこんな丁寧なご対応を受けたのは初めてですよ。しかも、分かりやすい。

ライター大内

「店名ですけど、よくある『辰巳』という字では無いのですね」

東さん

「実のところ、私にも『己』なのか『巳』なのか、昔はどちらかわからないんですよ。今は名刺の漢字の方が合っていると思うんですけどね」

“介”が手書きされている!「今、オヤジのしかなくて…」とお父様の名刺を自らの名前を上書きしてくださった一枚。こういう素朴なところにグッときます

ライター大内

「お店の創業は1828年。約200年前ですね!」

東さん

「柳川料飲組合から教えてもらったのですが、はっきりと伝わっていないんですよ」

ライター大内

「ヒェ〜!さすがです!最初はうどん屋と仕出し料理店に宿泊施設も兼ねていらしたんですね。そこから、食堂になり、甘味処やカマボコ製造も手がけていらしたと」

東さん

「と、近所の人に言われました。そのうち親父、つまり先代から洋食に変わり、昭和48年(1973年)には洋食メインにちゃんぽん、丼モノを加えて、今で言うファミリーレストランになりました」

ライター大内

「七代目の東さんもホテルのレストランで洋食の腕を磨いたそうですね。やはり跡を継ぐおつもりだったんですか?」

東さん

「う〜ん。特に強要もされなかったですね。曽祖父も祖父も『この味を引き継げ!』というタイプではなくて、自分でメニューや味付けを変えていましたし。私も今の風潮に合わせて、少しずつ味を変えているんですよ。お客さんには『昔と同じ味で落ち着く』と言われてますけど(笑)

ライター大内

「なるほど!ご本人よりも常連さんの方がよくわかっていらっしゃるような。昔から愛されているんですね」

洋食と人気を二分するのは
筑後地方で一番古いちゃんぽん

ライター大内

「ところで、洋食レストランなのにちゃんぽんも出してるんですね」

東さん

「そうなんです。うちはこの辺りで一番初めにちゃんぽんを出したんですよ。約90年前かな

ライター大内

「え〜!それはすごい歴史!!どんなきっかけで出したんですか?」

東さん

「先々代代が長崎に行って作り方を修行したんです」

洋食屋さんのちゃんぽんとあなどるなかれ。辰己屋のちゃんぽんは、本場長崎仕込みの本格派です。辰己屋といえばちゃんぽんと言うファンも多いとか。4代目の時に親交の合った長崎市料理組合の方に話を聞いて、その息子さんである5代目が長崎市に行って学んだそう。メニューに出してからは柳川でも人気に火が付いて、いろいろな人がこっそりと習いにきたんだとか。そんな自慢の味、早速いただいちゃいましょう!

ライター大内

「わ!豚骨スープに野菜の甘みが溶け出して、すごくまろやかです。ずっと飲んでいられる! ところで、一般的にはあまりちゃんぽんで見かけないミックスベジタブルが使われているのは洋食屋さんならではの特徴ですよね?」

東さん

「あ〜、それは親父が野菜を切るのが面倒だからって使い始めたみたいですよ」

ライター大内

「あ、そういう理由なんですね。正直ですね(笑)。でも食感も変わって大正解ですよね。麺もシコシコしていて食べごたえあるなあ」

お母さま

そこで、厨房でさりげなく東さんのお手伝いをされていたお母さまが登場。

「この麺はのびにくい特注品なんですよ。スープもわざわざ寸胴でとっているので手間がかかるんです。正直やめたいけど、ご近所さんが辞めるなって言うから」

ライター大内

「それは、これだけおいしと全力で止めたくなります!これからも続けて欲しい(切実)」

恐るべき早ワザで繰り出す
妥協なしの洋食もハズレなし

ひょうひょうとしたお二人にこっちが焦りつつ、メインの洋食へ。
大きなエビのフライ、ホテル仕込みのハンバーグとオムレツが一度に楽しめる豪華なプレート「エビバーグセット」をオーダー。

ちょっと厨房をのぞかせてもらうと、先ほどとはうってかわって真剣な表情の東さんが手早くハンバーグの空気抜きにとりかかっていました。小判形に整えられたタネを一気に焼いて肉汁を閉じ込めたら、オーブンでじっくり火を入れます。その間に約30cmはあろうかという大エビを開いて、パン粉をつけてカラリと揚げます。

インタビュー中の穏やかな表情とは打って変わっての佇まい!シビれます!

ラストはフライパンを小刻みに揺らしながら黄金色のオムレツが完成。一品できあがるごとにそっと現れて盛り付けるお母様とのコンビネーションもお見事!は、早い!残像が見える気がする!

オムレツ・エビフライ(おかしら付き!)・ハンバーグが付いたエビバーグセット(デザート/コーヒー付)(¥2,400)。チェリーがのったポテトサラダやスパゲッティも加わった“ザ・洋食“なメニュー

ライター大内

「うわ〜!おいしそう!いただいちゃいますよ〜」

ちゃんぽんの直後にも関わらず、ほかほかと湯気を立てるハンバーグやきつね色のエビフライに全神経が集中!
まずはギュッと旨味が詰まったハンバーグを一口。なめらかな舌触りのミンチから溢れ出る甘い肉汁とコクのあるデミグラスソースが絡まって、濃厚な旨味を奏でます。う〜ん!ライスが進む〜。
お次に、大きなエビフライにガブリ!サクサクの衣の下のふっくらとしたエビに一口目からノックダウン!卵たっぷりのタルタルがさらにおいしさを倍増させます。

ライター大内

「エビフライのエビはなぜ開いているんですか?」

東さん

「短時間でムラなく火を入れるためですかね。いつの頃からかやっています」

ライター大内

「なるほど。昔からこの大きなエビを使っていらっしゃるんですか?」

東さん

「そうだと思います。昔はこの奥でかまぼこも作っていたんです。その原料となる魚と一緒にエビが水揚げされるんですよ。それを料理に使ったのが始まりです。今は仕入れていますが、天然モノにこだわっています」

ハンバーグにエビフライと、洋食のスターによるおいしさの連続にさらなる追い討ちが。ホテルメイドのふわふわオムレツです。こちらでは鶏肉ミンチとタマネギのみじん切りが入っているのが特徴で、まったりとした卵の味をより洗練させています。

ライター大内

「オムレツの具が鶏ミンチなのは何か理由があるんですか?」

東さん

「いや、特に理由は無いです。親父がやっていたのを引き継いだだけで」

ライター大内

「お父様ステキ!それにしても全部注文が入ってから作るんですか!?厨房では基本お一人なのに、作り置きは一切されないんですね」

東さん

「やっぱり出来立てを食べて欲しくて」

ライター大内

「正直、手間がかかるからオーダーもらうの面倒だなって思われるメニューもあるんじゃないですか?」

東さん

「うーん。。。丸鶏を仕入れてきて、切り分けてもらうところから始めるグリルチキンですかね。でも、一定のファンの方がいるので辞められないんですよ」

ライター大内

「うわ〜! そんなに手間ひまかけてるんですね。チキン、絶対おいしい! というか、うすうす感じていましたが、辰己屋の常連さんの発言権が強すぎます(笑)」

東さん

「親父の代からの常連さんもいますからね。家族も知らないようなうちの事も教えてくれます」

ライター大内

「きっと常連さんは、東さんのことを息子とか孫だと思われているんでしょうね! お客さまにとっても思い出の場所がずっと続いてくれているのは嬉しいですよね。ちなみに今後挑戦されたいことはありますか?」

東さん

「う〜ん。手が空いたらカレーを増やしたいかな。あとは高齢の方も増えてきたので、宅配なんかも充実させたいですね」

ライター大内

「うわ!カレーもおいしそう!お一人だと大変ですよね。ちなみにお子さま(お嬢さん)が後を継がれる予定は?」

東さん

「う〜ん。わかりませんねえ。僕は200周年までは頑張ろうと思っていますよ。後継者は今の所いないしね〜」

ライター大内

「え!1826年オープンだから、あと8年じゃないですか!もったいないです!ほら、奥さまも首を横に振っていますし」

東さん

「そうですねぇ」

厨房にいない時の東さんはとても和やか。歯切れのよい物言いが素敵なお母さまと気配り上手の奥さまに囲まれ、お客さんの声に真摯に耳を傾けます。
それでいて一度オーダーが入れば、丁寧かつ確かな技術で応えてくれるのです。
七代続く老舗と聞いて、初めは暖簾の重さに緊張しながら伺ったのですが、そんな気負いは無用。常連さんも一見さんも変わらぬ暖かいサービスに胸が熱くなりました。きっと代々のご当主もそんな接客を続けてきたからこそ、こんなに長く愛されてきたんでしょう。
願わくば、新たにこちらの味を継ぐ方にも気負わずのびのびと腕を振るって欲しい。そして、ちゃんぽんも洋食も残してもらいたいものです。

厨房の一角に飾られている年季が入った心得。料理とお客さんへの真摯な姿勢が代々こうやって伝わっているんですね

No.01 No.01
地域: 辻町
店名: レストラン辰己屋
ジャンル: 洋食
お問合わせ:
0944-73-1888
営業時間:
11:00〜21:00(OS 20:30)
定休日:
不定休
住所: 福岡県柳川市辻町10
アクセス方法: 西鉄柳川駅より車で3分

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