No.10 地域 大和町
店名 古賀天ぷら屋

近所にあると嬉しい店ナンバーワン!
仕事ぶりと味で語る、静かなる天ぷら道

「古賀天ぷら屋」の3代目・古賀巨人さん

冬の早朝5時。もはや道路なのか掘割(柳川を流れる水路)なのか見分けがつかないほど真っ暗闇な住宅街の中にポツンと灯る明かり。訪ねてみると、そこでは静かなる戦いが始まっておりました。

九州に暮らす人間にとってはなじみ深い“天ぷら”や、おかずたっぷりの弁当が評判の「古賀天ぷら屋」の開店時間は9時。でも、その仕込みはこの早朝から始まるのです。
なにせ天ぷらだけでも約20種類、それぞれ200枚以上は用意されています。一番人気の「まる天」なんて1日1000枚ですって!しかもほとんど手作業ですよ。

早朝開始の取材で、寝ぼけ半分の私たちに、「この時間から作らないと間に合いませんから」と言い残して、店主の古賀巨人さんは厨房へ消えて行かれました。右に左に移動しながら一度に数種類もの天ぷらを仕込んでおられます。まるで海外ドラマの「24 -TWENTY FOUR-」さながらの緊迫感。ご主人の斜め下あたりにデジタル時計の表示が見える気がする…。
ハラハラしながらその動きを見守る私たち取材班にも戦いの時がやってきました。そう、こちらは理性との真っ向勝負!だって、揚げたての天ぷらを前にしてつまみ食いをせずに耐えることができますか?本当、我慢した自分を褒めてあげたいですよ。

取材/絶メシ調査隊 ライター/大内理加

天ぷらと惣菜に加えて仕出しも…
開店までの4時間は全力疾走!

九州の“天ぷら”と言えば、これやろうもん!

「古賀天ぷら屋」のお話をする前に、ちょっとおさらいをしておきます。ここで言う「天ぷら」とは、衣をつけて揚げるアレじゃないんです。九州以外では一般的に「さつま揚げ」と呼ばれている方、魚のすり身を油で揚げたアレです。
博多うどんの上とか、ちゃんぽんの中とか、九州のうまいものにはちょこちょこ登場するソウルフードの一つです。
九州にお住まいの方なら大体わかっていただけるかと思いますが、揚げたての天ぷらは「カリッ」とか「サクサク」という類の味わいではないのです。
少し甘めに味付けした魚のすり身は、揚げると「ふんわり」な食感。油ものですが柔らかく、アツアツのまま頬張ると旨味がジュワッと広がります。揚げたてを前にして冷静に取材を進めなければならない私たちの葛藤、お分かりいただけたでしょうか。

さて、「古賀天ぷら屋」の仕込みのお話へ戻ります。こちらでは、ざっくり分けて「天ぷら」「惣菜・弁当」の二つの流れがあります。朝イチで厨房に立つのは古賀さんお一人。天ぷらのタネを仕込み、次々と揚げていきます。7時をすぎたあたりで古賀さんのお母様と叔母様、スタッフの方が厨房に入り惣菜を作るのです。見えない手を4本ばかり隠し持っているのではないかと疑いたくなるほどの仕事量をこなしています。

「まる天」は穴を空けた型の下に板を重ねて、型にすり身を流し込む。型を外して、そのまま油に落として揚げる。1回の作業で2個できるが、古賀さんは目にも留まらぬ速さで約1,000枚揚げる

天ぷらに使う型はなんと古賀さんのお手製。木製のものだと1年ほどで取り替えになるそう

古賀さんが木の型に「まる天」のタネを流し込んだと思えば、次の瞬間に型を外してタネをフライヤーの中へ。全部入れ終えたら、隣のコンロにかかった鍋でサバの煮付けを作り、同時に油炒めに使う高菜を用意しています。その後ろでは、お母様がお弁当用のお米を洗いながら、ポテトサラダのジャガイモを茹で、きんぴらを煮付ける。それぞれが特に指示を出し合うわけでもないのに、ムダのないパフォーマンスで着々と料理が完成していきます。何より驚くべきことに、こんなに忙しい中でもどこか穏やかな空気を感じます。皆さんが各々、自分のやるべき仕事が完璧に頭に入っていて、お互いに信頼し合っているんですよね。仕事風景というよりも、なんだか完璧なマスゲームを見た時のような感動に包まれました。

7時から調理場に立つ古賀さんのお母様が手がける惣菜も続々と並び始める。厨房は陽が昇る頃には惣菜でいっぱいになった。

時刻はまもなく開店時間の9時。店頭のショーケースには、天ぷらの山と惣菜がところ狭しと並んでいます。う〜ん、食べたい天ぷらがありすぎる。お客さんは迷うだろうなあ。

“味を変えない”がお店のモットー。
若者に人気の新作にも注目!

朝9時の開店直後には、約20種類の天ぷらが揃い踏み。売り切れになってしまっても諦めずに一声かけてみてください

「古賀天ぷら屋」のピークは11〜12時のお昼前です。この日は仕出しの注文が入っていたので、厨房での仕事を終えた古賀さんは配達へ少し落ち着いた午後にお話をお聞きしました。

ライター大内

朝から本当にお忙しいですね。今日は何時に起きられたんですか?

古賀さん

毎日大体4時頃に起きますね。

ライター大内

そのまま閉店までお店にいらっしゃるんですよね。毎日ってすごい!
古賀さんはいつからこのサイクルで生活されているんですか?

古賀さん

働きだしてからなので30年くらいですね。お店自体は祖父の代に創業したんですが、最初は蒲鉾店だったんですよ。父の代で天ぷらに変更したんです。それで支店を出そうかという話が持ち上がって、私がその2号店を任される予定で跡を継いだんですよ。結局は本店で父と働くことになったのですが。

ライター大内

学生の時とか、「継いでくれ」って言われていなかったんですか?

古賀さん

ええ。全然考えていなかったです。ここで働くことになってから仕事を覚えました。

厨房では水仕事も多いが、古賀さんの手は血色がよくツヤツヤ。美容の秘訣は天ぷら油だろうか

ライター大内

3代続くお店ですし、天ぷら作りもさまざまな手順がありますよね。ご苦労やとまどいなどなかったんですか?

古賀さん

それが、苦労はあんまり無かったですね。結構すんなり覚えました。

ライター大内

で、でも天ぷらを揚げるコツとか、すり身の作り方とか、ものすごく早かったですよね?

古賀さん

う〜ん。あれも慣れですもんね。

ライター大内

じゃあ特に力を入れていらっしゃる天ぷらってどれですか?

古賀さん

難しいな〜。

ライター大内

強いて言えばでいいですよ!何か、何かお答えを!!

古賀さん

やっぱり「まる天」ですかね。

ライター大内

(ほっ。よかった〜)
こちらの「まる天」はちょっと小さめなんですよね。皆さん、一回に何枚も買っていらっしゃいました。

古賀さん

お客さんは20枚くらい買っていく人もザラです。
遠方の方は400枚くらいまとめ買いされますね。
頼まれて来られるそうです。

ライター大内

すごい! 遠くはどちらからいらっしゃいますか?

古賀さん

佐賀や熊本から来ていただいてます。
「ここの天ぷらじゃないと」って言っていただいてます。

ライター大内

確かに、こちらの天ぷらは、ほのかに甘くてキメが細かいというか、なめらかでもっちりしている印象ですよね。ゴボウやレンコン、エビなど具材で食感や風味が変わるので全メニューを制覇したくなります。味付けはいろいろ変えていらっしゃるんですか?

古賀さん

いや、先代の時からずっと同じやり方を通しています。
変えたらダメなんです。
皆さん、この味を楽しみにされているわけですから。

まる天はなんと1枚15円と価格にも驚き!この日来られた常連さんは「おでんにする」と買っていかれました

ライター大内

なるほど。変わらないことがむしろこだわりだと。それで、今も機械にまかせず手作りを続けていらっしゃるんですね。逆に古賀さんの代で変えたところや新しいメニューはあるんですか?

古賀さん

そうですね。僕が作ったサバの煮付けくらいかな。

ライター大内

天ぷらの間にしれっと並んでいますね。このツヤが美味しそうなこと!ご飯がめちゃめちゃ進みそうですね。

古賀さん

お弁当のおかずに合うかなと思って出したら人気が出たんですよ。仕出しの時も「サバ入れて」と言われますもんね。

朝イチで作られた「さばの煮付け」。店頭に並ぶ頃には味がしっかり染みて、このツヤに

ライター大内

サバの煮付けに、きんぴらゴボウやレンコンの煮物に、お惣菜もファンが多そうですね。味付けはどなたが考えられているんですか?

古賀さん

私が昔から食べてきたおばあちゃんの味ですね。完全にうちのメニューです。

ライター大内

うわ〜一番おいしいやつじゃないですか。あと、こしょう天やハムサラダ天など、珍しいメニューも気になります。こちらのオリジナルですか?

ポテトサラダをハムで巻いて揚げた「ハムサラダ」。油を含んでガッツリ感を増したポテトサラダは一見、いや一食の価値アリ!

古賀天ぷら屋の天ぷら御三家、奥から芋まんじゅう、まる天、ハムサラダ。ハムサラダの断面に惚れ惚れ

古賀さん

そうです。ハムサラダは、ポテトサラダをハムで巻いて揚げたものです。ハムをチクワに変更する時もあります。食べてみますか?

ライター大内

ぜひ!
ポテトサラダを揚げるなんて初めてです。ポテトサラダ自体がホクホクでおいしいし、マヨネーズのほのかな酸味が絶妙です。ハムでさらに食べごたえもアップしています。
こしょう天は後からジワジワ来る辛さ。クセになりますね。ビールに合いそう!
ところで、この芋まんじゅうも人気なんですか?午前中で売り切れるくらい来る人来る人が買ってますよね。

古賀さん

そうです。先代からのメニューです。ふかしたサツマイモを潰してお砂糖を加えたタネを揚げています。

ライター大内

芋をそのまま揚げた天ぷらとは違って、こちらは完全にスイーツ。おやつにぴったりですね。ついつい買い過ぎてしまいそう。

こちらは芋まんじゅうの断面。ぎっしり入ったサツマイモは素朴な甘みが魅力

古賀さん

食べきれんで冷えた天ぷらは、フライパンに油ひかんで焼いてみてください。香ばしくなっておいしいですよ。お好みでちょっと醤油垂らして。

ライター大内

なるほど!また食感が変わっておいしそうですね。

天ぷらはテイクアウトのみ。店を出るや否や待ちきれずにかぶりついてしまう食いしん坊も多数いるそうな

作りたての味が教えてくれる
地域に愛された老舗の誇り

多彩な味が揃う天ぷらやお惣菜に加えて、注文後におかずを詰めてくれるお弁当も嬉しいサービス。こちらでは、古賀さんのお母様と叔母様、女性スタッフの方が対応してくれます。このお弁当目当てに通うサラリーマンも多いそうですよ。

ライター大内

お母様と叔母様はずっと一緒に働いていらっしゃるんですか?

古賀さん

そうですね。もう30年になります。

ライター大内

どうりで。チームワークが完璧だと思いました。古賀さんが安心して背中を任せている印象です。先代の味を知っている皆さんからアドバイスされたり、教えてもらったりすることはあるんですか?

古賀さん

味について言われることはないですね。普段は関係ない話ばっかりしています。

ライター大内

今まで喧嘩したことは?例えば先代のお父様とか。

古賀さん

ないですないです。私は争い事が嫌いなので(笑)

ライター大内

わかる気がします。古賀天ぷら屋の跡継ぎって考えていらっしゃるんですか?

古賀さん

うーん、特には。

ライター大内

親戚の方が継ぎたいとか、そんな話はないんですか?

古賀さん

いやいや、うちはブラック企業と言われてますから(笑)止めますよ。

ライター大内

え〜。お店がなくなると常連さんが悲しみますよ!

厨房で八面六臂の活躍を見せていた古賀さんは、オフになると打って変わっておっとりした口調に。こういったインタビューでは、雄弁に語る方もいれば、あまり話されない方もいますが、古賀さんはおそらく後者の方。一般の人から見ると驚くような技術や工夫を「当たり前」と受け止めていらっしゃるフシがあるのです。メニュー数を減らすとか、機械を導入するとか、仕込みの手間を省くことも考えられるのに、毎日夜明け前から一つ一つ手作り。常連さんの期待を裏切ることなく、むしろ上乗せする勢いで先代からの味を守り続けているんです。
これって、ものすごいカッコいいことなんですよ。古賀さん。
睡眠不足に気をつけて、ぜひ続けてくださいよ〜!

No.10 No.10
地域: 大和町
店名: 古賀天ぷら屋
ジャンル: 惣菜
お問合わせ:
0944-76-4244
営業時間:
9:00〜17:00
定休日:
月曜
住所: 福岡県柳川市大和町中島98-3
アクセス方法: 西鉄中島駅より徒歩13分

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