日本の国指定文化財に泊まる!福岡「柳川藩主立花邸 御花」で体験するお殿様の優雅な暮らし

No translations[3] to カテゴリ for features: 特集

目次

初めて福岡の柳川を訪れる多くの方は、水郷の堀が織りなす風景に心を惹かれることでしょう。しかし、この歴史ある城下町をより深く知りたいのであれば、江戸時代(1603〜1868年)に誕生し、現在も藩主の末裔が営む料亭旅館「柳川藩主立花邸 御花」(以下、「御花」)に一泊し、文化に触れる旅を体験してみてはいかがでしょうか。

御花は、立花家400年の歴史を受け継ぐ文化財の邸宅であり、歴史的建造物をそのまま残しながら、宿泊施設として運営を続けている日本でも数少ない貴重な場所です。ここを訪れることは、単に観光地を巡るだけでなく、立花家の歴史的な日常の中に入り込むことを意味します。庭園、建物、そして料理に至るまで、御花というこの江戸時代から受け継がれる物語を、最も身近な方法で紐解いてみましょう。

藩主邸宅から文化財へ——御花と立花家の400年物語

御花の持つ魅力を真に理解するためには、その背景にある主役、柳川藩主・立花家の物語を抜きにして語ることはできません。

御花の歴史は、初代藩主・立花宗茂が1587年に柳川城に入城したことに始まります。彼は傑出した武将であるだけでなく、優れた統治能力を持ち、領民から厚い信頼を得ていました。関ヶ原の戦いで一時的に領地を失いますが、その人望と徳川幕府からの評価により、唯一旧領への帰還を果たした戦国大名となりました。

江戸中期(1690年~1780年)になると、第5代藩主・立花貞俶は、側室と子息の住まいを柳川城の隣、現在の御花の地に移しました。この地には四季折々の花が咲き誇っていたことから、「御花畠」という愛称で呼ばれ、これが後に「御花」という名前の起源となります。

明治時代(1868年~1912年)に入り、武士制度が廃止されると、立花家は華族となり、伯爵位を持つ近代の貴族となりました。邸宅もこの時期に和洋折衷の改築が行われ、新時代における立花家の地位と格式を示しました。

しかし、第二次世界大戦後、日本で新憲法が施行され華族制度が完全に廃止されると、立花家は資産の大部分を失う事態に直面します。家族が存亡の岐路に立たされた際、彼らが残すことを選んだのは、東京にあった邸宅ではなく、家族の記憶を宿す柳川のこの邸宅と伯爵家農場でした。

先祖から受け継いだ文化財を守るため、第16代当主の立花和雄氏と夫人の文子氏は、1950年に邸宅を料亭旅館へと改築し、「御花」と名付けました。これにより、この歴史的建造物は新しい形で立花家の物語を継続し、柳川の記憶を今日まで伝えています。

現代表 立花家18代 立花千月香

立花家にとって、柳川は代々住み、治めてきた地であるだけでなく、家族の精神の根です。現実の困難に直面しながらも、彼らはここに残り、家族の歴史と記憶が詰まった場所を守り抜くことを選びました。現在、御花は旅人と歴史が出会う空間として生まれ変わり、時代の流れの中で立花家と柳川の記憶と文化を語り続けています。過去を受け継ぎ、未来へと向かう御花は、今、新たな姿で次の百年を迎えています。

御花を歩く——殿様屋敷の建築の魅力を探求

御花に足を踏み入れると、まるで明治時代の時が凝縮された建築博物館に迷い込んだかのようです。敷地内の主要な建物は、多くが明治43年(1910年)に建てられたもので、立花家が藩主邸宅から伯爵家へと移行した時代の美意識と工芸を留めています。1978年に松濤園を含む1910年に建てれらた邸宅が国指定名勝に指定され、国の文化財となり、2011年に御花の全敷地7,000坪が国指定名勝「立花氏庭園」として指定されました。

これらの歴史的建造物をこれからの100年後の未来に繋いでいくために、近年では約40年前に建設された宿泊棟改装が行われました。文化財の延長線上として、時を超えて愛される普遍的な美しさを追求し、欄間や床の間といった元の構成要素を残しつつ、八女提灯、井草畳、黒漆喰など地元の素材を採用し、九州の職人技を継承したデザインに改装されました。さらに、環境保護のため、館内のバスアメニティには石油成分を一切含まないブランド品を選び、柳川の美しい水環境を守るという姿勢を表しています。

それでは、私たちの足取りに合わせて敷地内を巡り、それぞれの建築空間が持つ風貌と物語を見ていきましょう。

松濤園

御花の象徴である「松濤園」は、第14代当主・立花寛治が心血を注いで造り上げた観賞式庭園です。黒松が池を取り囲み、池の中の大小の岩石や中島が大海と島々を象徴し、深い情感を湛えた景色を創り出しています。全体構成の優雅さと繊細さから、1978年に国指定名勝に指定されました。

大広間

松濤園に隣接する「大広間」は、約百畳の規模を誇り、近代和風建築の風格と美意識を体現しています。ここからは松濤園全体を一望でき、立花寛治が自ら設計した視覚的な動線となっています。

西洋館

純白の「西洋館」は、立花家の近代化への歩みを象徴しています。この迎賓館は、明治時代に要人たちを招いた園遊会が催された場所で、館内には初期の電灯設備や西洋式ランプシェードが今も保存されており、明治期柳川の代表的な建築物となっています。

家政局

伯爵家の財産管理などを担った「家政局」は、建築当初の姿を今に留めており、日本国内でも現存している非常に珍しい家政機関の貴重な遺構です。

立花家史料館

立花家400年の歴史を深く理解したいなら、「立花家史料館」は必見です。館内には、藩主時代から伯爵時代にわたる美術工芸品が収蔵されており、国宝や重要文化財を含む約30,000点もの貴重な資料は、日本の武家文化としては稀に見る膨大かつ完全なコレクションとなっています。

御花に宿泊——一泊二日の深い楽しみ方

御花の歴史と建築美をご理解いただけたところで、次は実際に一泊し、この文化財が持つ静けさと風情を肌で感じてみませんか。ここでは、私たちが厳選した一泊二日のおすすめコースをご紹介します。定番の川下りから宿泊者限定の館内アクティビティまで、御花の日常に入り込み、暮らしの中の歴史を体感する旅へご案内します。

Day 1

柳川川下り

柳川に到着したら、まずは川下りから旅をスタートさせましょう!西鉄柳川駅近くの乗船場から「通常川下りコース」に乗船すれば、駅から御花まで手軽に移動できます。約1時間の船旅では、船頭さんの解説と歌声を聞きながら、両岸の伝統家屋や柳の影を眺め、まるで時を超えたかのように、柳川ならではの水郷の魅力を感じられます。

御花にチェックイン

下船後、徒歩で御花へ向かい、荷物を預けてチェックイン手続きを行います。午後3時から入室可能です。

文化財建築の見学

チェックイン後、松濤園、西洋館、大広間など、敷地内の歴史的建造物を無料で自由に見学できます。これらの空間は通常、一般のお客様は有料かつ16時までの営業ですが、ご宿泊のお客様は心ゆくまでゆっくりと館内を散策し、建築の魅力と雰囲気を堪能できます。

特に午後4時以降は、敷地内が宿泊者限定の専用空間となり、西洋館や庭園テラスは夜11時まで開放されます。昼間とは違う、幻想的な夜の風情を体験できます。

会席料理の夕食

夕方5時を過ぎると、心を込めて作り上げた会席料理の夕食を召し上がっていただけます。旬の食材を丁寧に調理した一皿一皿が、季節の風味と繊細な美しさを表現しています。お食事の空間は、かつて立花伯爵一家が使用していた居室であり、窓の外には松濤園が広がります。歴史と風景が織りなす時間の中で、心ゆくまで美食に浸ってください。

※事前にご連絡いただければ、ビーガンやベジタリアンのメニューにも対応可能です。出汁の使用有無など、ご要望に応じて調整いたします。

晩酌タイム

食後は大広間に移動し、無料のドリンクを楽しみながら、静かな夜の松濤園を眺めてみてはいかがでしょうか。この上なく優雅な一日の締めくくりとなるでしょう。

Day 2

舟上での朝食

朝目覚めたら、まずは御花だけの特別な朝食タイムを楽しみましょう!通常の和定食の他にも、「お舟朝食」を特におすすめします。専用の小舟に乗って、まるで殿様のように、静かな朝の柳川の風景を眺めながら、御花が用意した和朝食を優雅にお召し上がりいただけます。

食事が終わった後も、ロビーで無料のドリンクサービスを利用し、朝のゆったりとした時間をさらに延長することも可能です。

※お舟で朝食プランは予約時に選択が必要です。

チェックアウト

御花のチェックアウト時間は午前11時です。退館後、お荷物をフロントでお預かりできますので、柳川の街に出て、身軽にゆったりとした散策時間をお楽しみください。

柳川散策

チェックアウト後、近隣を散策し、御花と縁の深い史跡を訪ねてみましょう。柳川と立花家の深いつながりを感じられるはずです。

・柳川城跡: 立花宗茂が築城した城で、柳川藩の政務と軍事の中心地でした。御花の歴史の源流の一つでもあります。

・三柱神社: 立花家の三神を祀る神社で、荘厳で静謐な雰囲気に包まれています。

・戸島家住宅: 立花家の重臣の旧宅で、江戸時代の町家の面影を残す貴重な建築物です。

ランチはうなぎのせいろ蒸しを

旅の締めくくりには、温かいうなぎのせいろ蒸しはいかがでしょうか。柳川には地元で有名なうなぎ料理店がたくさんあります。ぜひ各店の味を食べ比べてみて、あなたのお気に入りを見つけてください!

 

御花は、立花家400年の歴史の記憶を今に伝える場所です。建築、庭園、そして料理の随所に時間の重みを感じられます。かつての藩主邸宅に実際に宿泊し、武家生活のリアルな情景を体験できるのは、他の宿泊施設では提供できない貴重な経験です。早朝の松濤園散策から、夜間の大広間での晩酌まで、あらゆる瞬間が歴史と優雅さが織りなす非日常へとあなたを誘います。このような貴重な滞在体験こそが、御花独自の魅力なのです。

御花の宿泊情報やご予約方法についてさらに詳しく知りたい方は、「柳川藩主立花邸 御花」の公式サイトをご覧ください。ぜひ御花を訪れ、時を超える優雅な旅に出かけましょう。

ゆったり贅沢な時間を過ごす

水郷柳川の川下り

川下りのご案内